”テニング”というテクニックについて ”テニング”とは、アロワナに強い光を照射して、発色を増進させるテクニックのことです。 結論から先に言うと、レッドアロワナは、より強い光を当てれば、その発色が赤くなるといった性質があります。 矢印の位置、水槽の背面側に見えるのがテニング用のライト設備です。今は消灯した状態です。 この画像の撮影は、インドネシアにて行われたものです。 点灯するとこんな感じです。画像右の水槽を見て頂くと、正面からも照射しているのが見て頂けると思います。 この時は、撮影をするために左側の水槽の前側のライトは取り外してあります。 ”テニング”はインドネシア語での言い方で、英語で言うと、”tanning タンニング”、訳すと”日焼け”といったような意味です。 レッドアロワナの赤発色のメカニズムは、まだ完全に解明されたわけではありませんが、 今までの多くの事例から考えると、強い光、紫外線が照射された時に、発色が濃く、厚くなるのではないかと考えられています。 人間が日焼けするのも同じような理屈で、太陽光に長く当たると、メラニン色素の数が増えて肌が茶色くなるのは、 皆さんご存知のとおりだと思います。 赤発色が濃く、厚くなる要因は、他にもいくつかの手法がありますが、この方法によって赤さが増す確率が高いのは事実です。 現地のブリーダー、マニアの方々の中でも、意見が分かれるところですが、販売に向けてのストック、育成とか、 コンテストへの出品前に、この技法を実行するケースが増えてきている傾向は感じます。 実際、かなり強烈な光が照射されています。。。 あまりのまぶしさに、与えられたエサを食べにいくのですが、空振りをくり返すこともある程です。 こんな光を前後や上部から照射されれば、体調を崩す個体が出てくるのも当然だと思いますが・・・ ただし、この方法には大きな問題点があります。 強過ぎる光の照射によって、次のような問題点が発生する確率が高まります。 ・白内障などの視力障害を起こす可能性、最悪、失明の可能性もないとは言えません。 ・目たれを起こす確率が上がる。 ・ストレスでアロワナがおかしくなってしまう。(最悪、死に至るケースも) ・このテニングを、強めに行った場合、それによって得られた赤発色は、テニングをし続けないと維持できない場合が多い。 通常レベルのライティングでの飼育法に戻したら、日に日に赤発色、体色が薄くなっていく。 私が実際に見聞きした例で、ストレスによって粘膜が剥がれ落ちて、逆に赤発色が完全に薄くなってしまった例。 そして、これもおそらくストレスが原因だと思いますが、尾噛みをする個体が多数います。 現地のブリーダーでも、積極的にこの手法を用いている方もいるのが現実で、そのためには多少の犠牲もしょうがない、 といった考え方を持っている方がいますが、個人的にはあまり好きではありません。 その目的が、”より濃くして高く売りたい”とか、”単に売りやすくしたい”だった場合、なおさらです。 ファーム、ブリーダーレベルの個体の保有数を考えれば、”犠牲になるのは多数の中の少数”なのかもしれませんが、 あなたが、愛情を込めて大事に飼育している1匹がそのようになったら、やはりショックなのではないでしょうか。 逆に、そのようなやり方を全否定し、”いい魚を健康に飼育して、年数を重ねれば必ず紅くなる” といった信念を絶対に曲げない、頑固な強者ブリーダーもいますね。 今回、紹介させて頂いたレベルのテニングではなくても、お店で意図的に強めの照射によって発色をさせ、 ”幼魚なのに、すでにこれだけの発色を見せている個体です”といった販売をされた場合、 お客様がご自宅で飼育を開始されてから、当初見せていた発色よりも薄くなってしまった、ということも起こりえます。 テニング処理された個体を見分けることができますか? 正直、それを見分けることは非常に難しいと思います。 この点は、各自の考えもあると思うので、どちらが正しいかの論議は致しませんが、 当店ではなるべくこれに該当するような行為を行わないようにしています。 理由は、お店では、この点について最低限の管理を行い、お客様のところに行ってから、いろいろな施しを行うことによって 個体がどんどん良くなっていく、といった方がよいのではないかと思うからです。 適度な照射量と時間を考えて、発色を増進させることは、むしろ発色のためのテクニックと言えますが、 それをお店で販売中に行うのは正か邪かは、各販売店、各お客様によって考えが違うと思うので、 それに関しては、各自の正しいと思う方向で行えばよいと考えます。 私自身も、自分で飼育しているような個体の発色の調整に、一時的にでもこれに準ずる方法を使うこともありますし、 そこに ”お客様を騙してやろう”といった悪意さえなければOKではないですかね。。 ご自身が、自分の考え方やスタイルにあった、信頼のおける販売店を見つけられることが大事だと思います。 ◎その他の手法 今回の方法に準ずる技法として、上記のような白っぽい光を発するライト、ケルビン数の高めのライトや メタハラ等を照射するといった方法もあります。 ケルビン(K)とは、色温度を表す単位のことで、簡単に言うと、光の色味を示すためのものです。 これまた簡単に説明すると、数字が大きくなるほど、色は青白い方向に向かい、数字が小さくなるほど赤っぽくなります。 ちなみに太陽光は、5000〜6000Kと言われています。 ケルビン数が高めの球を用いる理由として、ケルビン数が高い光の方が、水中でも直進性が高い性質があり、 結果として、アロワナ飼育でよく使用される、フィッシュルクス等の赤めの光を照射した場合よりも、 より強い光をアロワナの体表に届けることができるからです。 より強い光が直接体表に届けば、より先のような効果が期待できることが予想されるのです。 ”どちらがきれいに見えるか”は、また別の話です。 最近では、その生体に最適な波長をうまく混合、調整して発売されている交換球も増えましたので、 ご自身の好みや、その生体に適した商品を選択していけば良いでしょう。 いずれにしても、いろいろなテクニックを試す時には、 必ずアロワナの様子や健康状態をよく観察しながら行っていくようにしてください。 |